天然ガス価格上昇で電気代高騰も

今冬に気温が低下して暖房需要が増えるとの見通しなどから、最近はNY株式市場の天然ガス価格が上昇してきている。まだ2022年にウクライナ紛争の影響で高騰した水準には程遠いが、天然ガスは日本の火力発電の燃料でありその価格高騰は電気代に影響する。

2022年に廃業した新電力も

　2023年と24年は世界的なインフレにも関わらず、アメリカ・NY先物市場の天然ガス価格は100万BTU＝2～3ドルの歴史的な低水準で推移していた。

　日本は2011年の東日本大震災と福島第一原発事故のため、それ以降原発の稼働を大きく制限した。そのため現在では発電の中心は火力発電となっており、火力発電の燃料にはLNG（液化天然ガス）を利用している。

　したがって天然ガス価格が上昇すると、日本国内の電気代高騰につながる。NY天然ガスはウクライナ紛争の影響によって2022年に一時10ドル近くまで暴騰したため、当時は日本の電力業界は大変な騒ぎとなっていた。

　地域電力は10社あるが、そのうち7社が最も基本的な料金である「規制料金」の値上げを政府に申請しなくてはいけなくなった。また現在多く存在する新電力会社は、電気代高騰のために新規受け付けを停止したり電力事業を廃業した企業もあった。電気代高騰を受け、2023年初頭から政府は電気・ガス代の補助金を開始した。

　しかし日本にとっては幸いなことに、天然ガス価格の高騰は2022年だけの短期で終わり2023年と24年は歴史的な低水準に留まっていた。それでも政府が電気・ガス補助金を完全終了できずずっと続けてきたのは、円安のため発電コストが上がり電気代が高止まりしていることがあった。また物価全体が上がっているため家計が圧迫され電気・ガス代という生活に不可欠なものを支援することに意義があった。

　そして2025年になるとNY天然ガス価格は前2年の歴史的な安値圏を脱し、3ドル以上の水準で推移している。最近になると今冬に気温が低下して暖房需要が増えるとの見通しなどから、4ドルを超えて上昇して28日には4.7ドル台で推移している。

　今年3月には一時的に4.8ドルをつけたので、その水準を超えると2022年暮れ以来の高値となる。そして天然ガス価格の高騰は、電気代高騰にもつながる。2022年当時は為替が現在よりやや円高で、天然ガス価格が最も高かった夏にはまだ1ドル＝140円であった。現在は150円以上に留まっており、円安面でも発電コストの上昇につながる。

　しかもまだ冬は始まっていないか、あるいは始まったばかりと言っていい時期にある。今後冬が本番になると天然ガス価格はさらなる上昇もありえる。そうなると円安と相まって、国内の電力会社の経営が圧迫される。

　下手をしたら2022年のように、地域電力が規制料金の値上げを申請し、新電力会社が新規受け付けを停止する事態にもなるかもしれない。今後の天然ガス価格の動向は要注視だ。