金利を上げない限り円安危機のリスクは消えない

先月に為替レートがそれまでレジスタンスラインだった1ドル＝152円を突破。その後は円安が止まらず、一時は160円をつけて政府日銀の介入観測が2回見られるなど危機的なレベルになっている。一部では米が利下げをすれば円安は落ち着くと期待しているようだが、日銀が金利を上げない限り将来的な円安危機のリスクは消えない。

FRBは利上げと利下げを繰り返す

　先月以降円安が危機的レベルになっている。ここ30年ではじめて1ドル＝151円をつけたのは2022年10月だったが、この時は政府日銀の介入で押し戻した。それ以来1年半ほど、介入への警戒感などから152円がレジスタンスラインになりなかなか突破されなかった。

　しかし4月10日に発表されたアメリカの3月消費者物価指数が予想を上回ったことで、米ドル買いが増えて152円の壁を突破。それでも市場が警戒していた介入がなかったため、その後は円安が止まらなくなった。

　余談ではあるが、こちらの記事で「152円が突破されても介入がなければ、その後はすぐに155円くらいまで行くこともありえる」と予想していた。

　先月10日に152円を突破されてから円安が進みついに29日に160円をつけたが、その直後に政府日銀の介入と思われる動きがあった。そして5月2日の米政策金利発表から約2時間後の午前5時頃に、またも介入と思われる急激な円高があった。

　この2回の介入観測で、とりあえず当面は160円を超えて円安が進行することを防ぐことができた。だが政府日銀関係者もおそらく、介入が円安危機の根本的な解決にならないことはわかっているだろう。

　現在ここ30年で最安レベルまで円安が進行しているのは、日米の金利差によるところが大きい。アメリカは政策金利を5％以上まで上げているのに対し、日本はゼロ金利と量的緩和を続けている。この金利と金融政策の差のため、円を売って米ドルを買う動きが世界各国で起こっている。

　逆に言えば現在の円安を根本的に解決するためには、金利差の縮小しかない。しかし日銀はいろいろな事情のため利上げが非常に難しく、アメリカの利下げを待つしかない状況にある。

　今後アメリカが2～3％程度の利下げをすれば、円安は一旦落ち着くかもしれない。しかし日本が金利を上げられない状態が長期続けば、たとえ今回の円安が収まっても将来的にまた同じような超円安になるリスクが残る。

　米FRBは数年、あるいはもう少し長い期間ごとに、利上げサイクルと利下げサイクルを繰り返している。そして2010年代はたまたま世界的な低金利時代で、この時期はアメリカを含む世界各国が金利を非常に低い水準に抑えていた。FRBは2015～18年にかけて利上げをしたが2.25～2.5％で利上げを止め、またその水準を維持していたのもわずか半年余りであった。

　このような低金利時代は歴史的に見ればかなり特殊な時代だ。だからこそ日銀が大規模緩和をしても円安にならなかったのだが、特殊な時代は長く続かない。実際に1つ前のアメリカの利上げサイクルは2004～06年で、この時は5.25％まで引き上げた。

　今後FRBが利下げをしたとしても、その数年後はまた利上げサイクルになる可能性は少なからずある。その時に日銀が利上げをできなければ、また円安危機になる。日銀が利上げをしない、あるいはできない限り、円安危機のリスクは残り続ける。